11:虚空と荒野の狭間にて
「この向こうは、死神の領域だぞ」
男性はそう警告していた。
行ったら最期。
誰も帰って来ない死の荒野。
彼の英雄の子孫も、この地で消息を絶ったという。
「だからこそ行くの」
少女は英雄の子孫を捜しているのだから。
それはとても当たり前過ぎることだった。
そして、それは少女の隣に居たい少年にとっても。
「何もないんだね」
少年は隣の少女に言った。
目指すのは果てしなく続く水平線。
生命の影、樹木の1本見られない。
「だって死の荒野だもの」
少女はそう答えた。
何もないという、死の象徴。
ふと。
何も無さ過ぎて何かが見えてくるような気がした。
白昼夢の如く。
少年を襲う眩惑。
この荒野が自分自身に見える。
忘れた名前。
失った過去。
何もない自分。
何もない事が死ならば。
それは自分にも、言えるのか。
自分はとても悪い何かなのかもしれない。
どうしようもない何かなのかもしれない。
「私はとても悪かもしれない」
突然、幻ではない声が聞こえた。
少年ではなく、それは少女の言葉。
そっと悟ったような表情で。
何故、そんなことを言うのだろうか。
深い色の瞳にも、荒野の幻覚が映っていたのだろうか。
この可憐な少女が悪なら自分は極悪だろう。
少年は不思議そうに、少女を見つめていた。
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