12:魔法都市
かつてこの都は様々な魔法が生きていた。
魔法都市と呼ばれたこの地には今はもはや誰も暮らしてはいない。
ただ時折、主のない魔法が生き残っているだけで。
「ここはかつてはすごい街だった」
カラカラと音を立てて、魔法動力の鳥が飛んでいる。
聞き取り辛い声を上げるのは、店の給仕をする魔力機械だ。
「死神、と呼ばれた者が現れるまでは」
昔は豊かな水を湛えていただろう人口の池。
それを中心に広がる広場と計画的に張り巡らされた道路。
至る所で朽ちているのは、清掃を担っていた機械だろうか。
大きな街だった。
何も知らない彼ですら、この街で人々が息衝いていた頃を思い浮かべられるほどに。
ただだからこそ疑問に思う事もある。
「こんなにすごい魔法を使えたのに、死神に負けてしまったの?」
いや、そもそもこの魔法はどこから来ていたのだろう。
魔法は魔法陣、物質、呪文が必要だと彼女は過去に告げている。
「この街そのものが魔法陣を形成しているの。
機械にもそれぞれ陣や呪文が組み込まれているわ」
転がった破片の裏にはびっしりと文字や記号が並んでいる。
「発動に必要な物質は…。
そもそも、それを「死神」が断った事で、この都は滅んだ」
「…詳しいんだね」
素朴な疑問に詳細な答えが出た事に驚く。
けれどもその後の彼女の言葉に、もっと驚く事になる。
「長く住んだのは山間の村だったけど、生まれたのはこの街だったから」
この都市の崩壊と供に英雄の故郷である村へ移る事になったのだと彼女は言った。
魔法都市は滅びる瞬間まで、何とか死神に抵抗しようとしていた事も。
「可笑しいよね。死神には、誰も勝てないのに」
そう呟いた彼女の表情は、生まれた地を惜しむ声ではなかった。
むしろどこか、恍惚としたものを宿していた。
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