――続きを予期する間奏
闘いも悲劇も全てはここから
間奏
インタルード
光が闇を照らしている。
白と黒の極端な世界。上気味な紋様の中でそう思った。
その光景を見ていると上思議な気分になった。確か自分は闇しか知らない。
それなのに、真っ白な光の筋は躊躇いなく自分を照らす。
何故こんなにも明るいのだろう。何故こんなにも白いのだろう。
何故ここにいるのだろう。何故闇に光が射すのだろう。
何故。何故。何故。何故?
『何故と訊かれても解らないわ』
彼女の声が聞こえた気がした。
いや、そんな事はない。彼女はたぶんもういない。
そう言えば、最後に彼女に掛けた言葉も「何故」だった。
結局、答えは聞けなかった。
ぼんやりとした記憶の底から彼女が言う。
『あなたが誰かに愛されれば…』
…彼女は誰かに愛されたのだろうか。
甘く優しい子守唄。あれは誰の為に唄われたのだろう。
虚ろな視線が宙を舞う。
しかし、本当に何故だろう。
自分はここに存在する。それはあってはならない事だ。
『…あなたも人間なのよ』
人間に、自分もちっぽけな人間になったのだろうか。
何故、何故、何故、何故?
いくら問い掛けても何も解らない。誰も答えてはくれない。
『…本当に何故かしら…』
上確かな記憶の断面が更に遠くなって行く。
赤い髪の少女はそれでも自分に語り掛ける。
『あなたこそ何故?』
何故、彼女を思い出す?
何故、彼女を繋ぎとめようとする?
ゆっくりと頭を振る。
問うまでもない。
彼女の唄が聞きたい。
甘く優しい子守唄。
今度は意地を張らず、自分の為に唄って欲しい。
他の誰の為でもなく。
そう、その為に存在する。他の何の為でもない。
彼女の唄を聞く為に、ここで目覚めた。
だから人の形をとったのだ。
何故達が消えて行く。もう意味を成さない。
闇の中で光を浴びて、それは記憶しか見ていなかった。
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