――忘れた頃に間奏
時々やってくる浅い眠りの様に
間奏 V
インタルード サン
その時、その瞬間。
何の後悔さえもしないと思っていた。
最良の瞬間だとさえ思った。
――幸せよ。
けれど。
目を逸らしていただけだった。
知らない振りをしていただけだった。
自分が何も手に入れてはいない事を。
あなたはとても優しかったけど。
あなたは何も裏切ってはいないけど。
自分の勝手なのだと何処かでは解っている。
だからよりにもよってこの瞬間に気付かされた事に。
『…ずっと』
その言葉だけを抱いて居たかったのに。
その言葉だけ抱いていけると思ったのに。
――嘘吐き。
自分が、嘘吐き。
幸せ、何て嘘だった。
『ごめん』
口にしていなくても、伝わってしまったから。
あなたのその瞳の奥に。
自分ではない誰かを見ている事を。
――だって、そんなのズルいじゃないか。
自分は何も、得てはいないと言うのに。
あなたの心もくれないというのか。
こんなにも欲した、あなたの心を。
だからせめて、一緒に堕ちて。
もうこれ以上ないというほど、バラバラになって。
その欠片の1つも、誰にも渡しはしない。
――ああ、そうだ。
奪おうとする者は、残さず消してしまおうか。
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