――溜息も付けない間奏
     まだまだ終幕は近付いては来ない



間奏 U
   インタルード ニ



 その堕ちて行くような絶望を、2度と忘れる事は出来ない。


 それはきっと罪。
 そしてずっと罰を求めている。

『……にい…ま』

 それは何かを失う、とは違う。
 それは何かが傷付く、とは違う。
 それはただただ、自分の愚かしい一面を知ったと言うだけだった。

――これで…

 愛だと思っていたものが、優しいだけではなかったと。
 ささやかに育んだものが、自分の残酷な本性だと。

「俺は……」

 忘れようと、すべてを黒く染めてしまおうと振舞った。
 過去も心も、真っ黒に沈む為に、多くの命を糧にした。

――これで、誰のものにもならない。

 やり直そうと、何かを代わりにしようと行動した。
 自分の愛の形を、移ろうものだと確認する為に、1人の少女を贄にした。

『……お兄様』

 これだけ罪だと感じていても、罰を欲していても、何も変われない。
 自分はあの瞳から逃れる事は出来ない。
 罪滅ぼしに命を差し出しても、どうしても求めてしまう。

「ただ本当は……」

 罪などどうでもいい。
 罰など欲していない。

 何もかもを捨てて、欲しかった。
 あの、白い手の温もりだけが。


 望みはまだ、絶たれてはいない。






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