01:名も無き少年




 眼を覚ますと、そこは見知らぬ場所だった。
 踏みしめる大地も、流れる大気も。
 照らす太陽すら初対面のように思えた。



 そんな場所に、ただ独り。
 何かに対するかの如く、立っていた。
 何かをなした後のような気だるさ。
 何かをしようとする気力。
 その2つが入り混じった不思議な心地で。
 ただ独り、立ち尽くしていた。



 何処から来たのか、解らなかった。
 何故ここにいるのか、解らなかった。
 何処へ行くのか、解らなかった。



 自分が誰なのかすら、解らなかった。
 知らない自分との初対面だった。



 顔も、手の形も、名前も、この思考さえも。
 今、生まれ出でたかの如き、真っ白さ。



 理解できることは、思考する言葉があること。
 名前も、記憶も、何処かに置いて来たようだが、言葉だけは忘れていない。
 それが、無性に嬉しく感じた。
 この戸惑いを、声にすることが出来るのだから。





「僕は、誰?」





 それは、最もな。
 でもそれ故に何の意味もない問い。
 自分自身に。
 自分ではない誰かに。
 それは答えられるものではないから。



 しかしそれでも、名も忘れた少年は、少しだけ楽しそうに笑った。