番外C----------
独り、その顛末を悟る。
悟り?
バハラタの北。
神殿を中心に成り立つ都市ダーマが存在する。
人生を変える神を崇める大神殿。
そこは新たな職業に着く人の聖地とも呼ばれる。
そしてその職業の中でも神に選ばれし者だけがなれるというのが賢者。
努力だけではなることは出来ないと言われる伝説の職業。
噂によるとダーマより東にそびえ建つ塔に、賢者になる手がかりがあるという。
「賢者か…」
銀の髪の若者が、ダーマがあるという方向を見ながら呟く。
「魔法を使えないという事がこの先ハンデになるかもしれないな」
盗賊の身である自分。
賢者などという大層なものになれるかはともかく、今のままでいいのかと自問することもなくはない。
魔法が使えないのは仲間の中で彼だけ。
回復も専ら僧侶のラゼリア1人の負担になっている。
このままで本当にいいのだろうか。
魔王バラモスを倒せるのか。
いや、辿り着くことさえ不可能かもしれない。
盗賊という職業に不似合いな真面目さを持った彼の思考は、ぐるぐると廻る。
そんな彼のもとへ、隣の部屋から女性2人の会話が聞こえてきた。
「ねぇ、ラズ。ダーマにいくと職業が自由に変えれるんでしょ?」
何がそんなに楽しいのか、弾んだ声はパーティの魔法使い。
「ええ。神官長が認めればね。
でも新たな職に就くと、また一から修行をしなくてはいけないそうよ」
何をそんなに優しく言う必要があるのか、柔らかい声はパーティの僧侶。
わずかな間を空けて、疑問符が放たれる。
「つまりレベルが1になっちゃうって事?」
恐らく首を傾げているのだろう。
それに対して変わらぬトーンが答える。
「そうね。だから職を変えるときはとても注意しなくてはいけないのよ」
「そうだよね。いまさらレベル1とかになっちゃったら、
足手まとい以外の何者でもないよね。
むしろ勘弁して!って感じだよね」
どこかでグサっという音が聞こえた気がした。
「うっかりするとキャタピラーとかにやられちゃうわ」
「うわ。豪傑熊とか一撃じゃない?」
いいながら、魔法使いは豪傑熊の真似なのか腕を大きく振りかぶっていると思われる。
それを受けて僧侶は優しく受け入れるかのように頷いたようだった。
「一撃ねぇ」
「笑えないよね、そうなったら」
そう言いながらもその声は笑っている。
「新たな人生の幕開けではなく、幕引きになるわね」
僧侶もまた、きっとにっこり微笑んで言った。
それがある意味トドメだった。
「…やめよ」
1人の若者が悟りに達した。
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