番外B----------



冒険しない一日もある。





ある日の1コマ -イシスにて-





 イシス城下にて。

「勇者くんと来たかったなー」

 照りつける太陽と砂の交じる風が吹く中、街を歩くのはぼやく少女と不機嫌な青年。

「何でブルーなの?」
「知るか。俺だって何でお前なのか聞きたい」
「ラズが良かった?」
「1人で十分だって言ってんだよ!」

 思わず全力で突っ込んでから、ここが街中だという事を思い出しトーンを落とす。

「そもそもお前が街に出たいとか言うからだろ」
「ラズはお城に調べ物。
 勇者くんは療養がてらお城に行くっていうし」

 砂漠の中の国と言う珍しい特色を持つこの街。
 それを前にお預けをされるのを我慢出来るほど大人しい魔女ではない。
 「じゃあ、クラムに付いていてね」と笑顔で僧侶に任されたこの盗賊が否と言いきれなかったのも要因の1つではある。
 以上の経緯を経て、馬が合わない2人がしぶしぶ街を見物がてら必需品の買い出しにでたのだ。

「勇者くんのいない宿に1人でいてもつまんないもん」
「お前ホントにあいつの事気に入ってんな」

 何気ない台詞だったが、彼女は喧嘩腰のまま答える。

「だから何なの」
「いや、向こうは全然興味持ってそうに見えないなと思っただけ」

 反撃する方法を見つけたというように返答した。
 喜ばしくない言葉に、彼女はむっと頬を膨らませる。

「ラズも別にブルーの事お気に入りじゃないと思うよ」
「だから何でその名前が出るんだ!!」

 結局彼は、街中だという事を忘れて再度全力で突っ込んだ。
 その後一緒にいる事に耐えきれず、予定よりも早く宿へ引き返した2人だった。





 イシス王城にて。

「お待たせ」

 王宮の立派な椅子で寝転んでいた勇者に青銀髪の僧侶は声をかけた。
 供に王宮へ赴いたが、帰りの約束などしていなかった。
 しかしながら、調べ物を終え陽の落ちる時間になっても彼は彼女を待っていてくれたようだった。

「先に帰ってくれていて良かったのに」
「“女性の送り迎えなんてさすが紳士ですわねゆうしゃさま”」
「え?」
「さっき通りすがりの城の子がそう言ってた」

 彼女はしばらくぽかんとしていたが、珍しく可笑しそうに笑った。
 どこの街でも1人で情報収集に赴く彼女にとっては今更ではあるが、
 一緒に来た以上は紳士としての義務は果たしていってくれるらしい。

「じゃあ、お言葉に甘えて紳士な勇者様に送ってもらおうかしら」
「ん」

 椅子から起き上り短い返事をする彼に、彼女はふと思った事を口にする。

「ストロってアリアハンで人気あったでしょ」
「は?」
「素敵だなって思ったから」

 躊躇いなく言葉にする彼女に、彼は怪訝そうな表情を浮かべる。

「不満?」
「いや…何かラズといい、女王様といい。
 美人に褒められてばっかりだとドッキリかなんかだと思うよな」
「どういうこと?」

 王宮を後にする為に歩き出す彼に、今度は彼女が不思議そうな顔をする。

「ラズが超美人だなって話」
「ほら、そう事言えるのもすごいわよ」
「その台詞、そのまま返すよ」

 溜息交じりに呟くと、彼は紳士らしく麗しき僧侶の為に扉を開けた。






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