死を廻る話 〜赤い予知夢〜
予知夢を見た。
それは赤い羽根の夢。
赤い天使の夢。
小学生の時、募金をして貰った、赤い羽根を2枚つけたような天使。
目覚めた時は、どこか、熱くて、冷たくて。
どこかへ行くような、帰るような。
どうしようもなく空虚な気持ちになった夢。
今まさに、その夢の中に居る。
私は両手を広げた優雅な姿で、地に背をつけていた。
背中からは左右に、血が流れ続けている。
上から見下ろすと、まるでそれは翼のよう。
体温と共に流れ出た赤は、元の入れ物の私を外側から暖める。
血を失い、血の暖かさを知るとは思わなかった。
苦しくはない。悲しくはない。
ただ、どこかへ行くような、帰るような。
どうしようもなく空虚な気持ち。
予知夢なんて見たのは初めてだったのに。
これが本当に最初で最後だということだろう。
割と頑張って生きた「生」の最期のビジョン。
私を見下ろしていた死神は、
「赤い、天使みたいだね」
と面白そうに笑っていた。
きっと見たのはソレの目線。
予知夢を、見た。
誰にも自慢は出来なかったけど。
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